『過去のない男』を観て気楽になる

『過去のない男』アキ・カウリスマキ監督

いいです。

ひじょうに。

カウリスマキは村上春樹の導きで見るようになりました。

この映画もしみじみして、かつ、ばかばかしい話でかなりよい。

しかも映像がスタイリッシュ。

わざわざワンカットで男が二人すっと向かい合って、握手して、二人が同時に回れ右をして去っていく、なんて場面は笑いつつもかっこいいなあ、と思いました。

若者たちにいきなり頭を殴られ、記憶を失った男が、別に記憶を求めるのではなく生きていこうとする話。

だけど殴られて病院に担ぎ込まれた際、心肺停止しているのに突然むくっと起きあがってドラマは始まっていくのだが、これってキリストの復活かな、と思いながら見ていた。

なんというか、別に神々しくなくて失敗ばかりしているけど(溶接がうまいという特技はある)、神ってこんな感じじゃないのかな、俗っぽくて、とずうっと見ていたのだが、深読みなのか。

登場人物が基本的にいい人ばかりなのがまたよい。

コンテナに暮らしている貧しい人々、救世軍。

すごくリアルで、そういう暮らしに作り手が敬意をもっていることがよく分かる。

その辺が『フィッシャーキング』にも似ている。

暴力的な若者に集団で逆襲するというシーンも似ているな。

音楽もよい。

横山剣さんの歌が列車で流れてくるのも泣ける。

そのとき主人公は鮨を食べて日本酒を飲んでいるんだなあ。