「万引き家族」

是枝裕和監督

 

*この記事はネタバレを含みます。

非常に見づらい映画になってしまいました。

まず、カンヌでパルムドールを取った、というだけですぐ見るのはいやだ(時間がたってからなら見る)。

さらに監督の発言とか、首相が何のコメントも出さなかったとか、有名な医者が「日本人の「万引き家族」を日本人が賞賛することこそ世界の恥ではないかな?」なんてTweetをしたりして(どうしようもない)、毀誉褒貶の渦中にあるし。

その上、私がこれまで是枝監督の作品をきちんと見ていない、ということもあります。

「誰も知らない」は見終わったあとつらくなりそうなので、「絶対見ない映画リスト」に入っています。

「そして父になる」はどろどろと深刻そうだ。

「海街diary」は女優さんが多くて「細雪」っぽいじゃないですかー。

「三度目の殺人」もどう考えても楽しい気分にならないよね。

とかなんとか理由をつけて観ないようにしてきたのですが、これほど観るべきではない条件がそろうと、逆に観たくなるのが性。

スーパーで万引きをする中年男と少年。

夜、二人は家に帰る途中、集合住宅の廊下にひとりの女の子が取り残されているのを見つける。

以前から、男は女の子が取り残されているのを気にかけていた。

その日は、女の子を家に連れてくる。

家は狭いが、男と老婆と男の妻、老婆の孫の五人で暮らしている。

老婆が女の子の身体を見てみると傷だらけで、虐待を受けているようである。

そのまま、女の子を「保護」して数日がたった。

テレビで女の子が行方不明になっているニュースが流れた。

親は捜索願を出さずにいたが、児童相談所からの連絡で行方不明になっていることがわかったのだ。

男の妻は、女の子に帰りたいかどうか尋ねて……

 

はじめは貧困家庭で、しかも血縁関係がない、万引きをして食いつないでる、ということで暗い話だなあ、と覚悟しながら見ていました。

だけど、この家族は万引きだけで生活しているわけではない。

リリー・フランキーは日雇いの仕事をしているし、安藤サクラもクリーニング屋で働いている。

がんばってはいるが、うまくいかない。

それでも、狭い部屋で鍋を食べたり、発泡酒飲んだり、本を読んだり。

生活の小さな幸せが積み重なって、この家族が「ユートピア」を作っているように見えてくる。

海水浴に行くシーンでその幸せは頂点に達し、隅田川花火大会の「音」だけが響く中「(花火大会は)おしまい?」というセリフで幸せは「おしまい」になる。

もちろん、こんなことが続くわけがない、と見ているほうもどきどきしながら観る。

スリルが映画をひっばっていく。

 

リリーさん、安藤さんに加え、松岡茉優さん、樹木希林さんなど、出演者の演技はすばらしい。

子役の演技もあまりにも自然。

狭い部屋で、みんなで食事しているのもおいしそう。

夏の暑さも冬の寒さもありありとわかる描写もすばらしい。

 

いちばん感じたのは、是枝監督の「耳の良さ」です。

いい小説家は耳がいい、とよくいわれます。

社会のさまざまな「声」を聞き分けて、小説にしていくから。

この映画でも、それぞれの役者の「話しぶり」がリアル。

リアルとは、現実にあるかどうかは問題ではなくて、この「ユートピア」を描写するのにぴったりだ、ということです。

特に、狭い部屋で家族が好き勝手にしゃべり、テレビも流れている場面。

血縁のない家族がいちばん「家族」らしくなっていて、すばらしい。

 

これまで是枝監督の映画を見てこなくて、若干損をした気がしています。

まあ、これなら賞を取るよなあ。