『「感情」から書く脚本術』

カール・イグレシアス 島内哲朗訳  フィルムアート社

 

カール・イグレシアスさんは、脚本家であり、脚本コンサルタントであり、スクリプト・ドクターでもあります。

kindleで読みましたが、単行本では440ページという大部となる本書の構成はこのようになっています。

INTRODUCTION 感情をお届けする商売
CHAPTER1 読者:唯一のお客さん
CHAPTER2 コンセプト:その物語にしかない魅力
CHAPTER3 テーマ:普遍的な意味
CHAPTER4 キャラクター:共感を掴む
CHAPTER5 物語:高まる緊張感
CHAPTER6 構成:のめり込ませるための設計
CHAPTER7 場面:心を奪って釘付けにする
CHAPTER8 ト書き:スタイリッシュに心を掴む
CHAPTER9 台詞:鮮烈な声
CHAPTER10 最後に:ページに描く

イグレシアスさんはタイトルのとおり「感情」を重要視します。

巧みに話を語りたければ、重要なことは1つしかない。読者を感情に巻き込むだけだ。

読者を感情に巻き込むためのテクニックが各フェーズに沿って説明されます。
また、実例も豊富です。
特に『羊たちの沈黙』や『北北西に進路をとれ』は繰り返し引用されます。
マニアックな映画を例にしていないので助かります。

イグレシアスさんの方針は、徹底したエンターテイメントです。

心を掴むということの肝は、読者がおもしろいと思うということだ。つまり、関心が引けるかどうかにかかっている。すべては、そこから始まる。面白そうと思ってもらえるかどうかは、最初から最後まで読者の関心を繋ぎとめられるかどうかで決まる。

反ハリウッド的な芸術至上主義の脚本家志望の人が読むと怒るかもしれません。
ただ、タルコフスキーだって、観客を寝かそうとして映画を作ったわけではなかったでしょう。

「それぞれの場面は、小さな物語である」というテーゼには感心しました。

場面というものが優れているのは、それが1つの小さな物語として完結するからだ。つまり、ちゃんと始めがあり、中があり、劇的な問いがあり、緊迫感が高まり、クライマックスを迎えて終る。1つの物語として構成されていなければいけないということだ。

場面ごとに対立などのドラマがあり、それが脚本全体の物語の構造、テーマに有機的につながるのがよい作品なのでしょう。
このCHAPTERの具体例として、『羊たちの沈黙』で主人公のクラリス・スターリングがハンニバル・レクターとの最後の対決に挑む場面が取り上げられています。

記憶力が低下している私もこの場面を多少覚えているのですから、よくできたシーン、すなわち感情に巻き込まれたのでしょう。

本の質量に圧倒されて、しっかり理解できたかというと疑問です。
ざっくり全体を読んだので、これからはたまに拾い読みをしていこうと思います。
脚本を書かなくても、映画や小説を読むとき、作り手の意図を理解するのに役立つ一冊です。