『カメラを止めるな!』

映画『カメラを止めるな!』公式サイト
映画『カメラを止めるな!』の公式サイトです。ENBUゼミナールのシネマプロジェクト第7弾作品。短編映画で各地の映画祭を騒がせた上田慎一郎監督待望の長編は、オーディションで選ばれた無名の俳優達と共に創られた渾身の一作。 脚本は、数か月に渡るリハーサルを経て、俳優たちに当て書きで執筆。他に類を見ない構造と緻密な脚本、37分...

上田慎一郎 監督

*この記事には段階的にネタバレがあります。完全なネタバレはしないようにしたつもりですが、未見の方は読まない方がいいかもしれません。

 

評判がいい映画なので、あまのじゃくの私は見ないでおこうと思ったりしました。

といいつつ、私の地元の映画館で封切られた最初の日の最初の回に見に行ってしまいました。

結局、見てよかった。

というよりも、見るべきです。

早く多くの人に、一度は見てほしい。

なぜなら、見てくれないとこの映画の話を少しもできないからです。

例えば観客の反応とか、自分の感想すら言うことができない。

 

先日読んだ『テロルと映画』という本の中で、四方田犬彦さんが「ネタバレ」なんて愚かしいということをおっしゃっていました。

『テロルと映画 スペクタクルとしての暴力』
四方田犬彦  中公新書 「テロル」と「映画」という言葉で思い起こすとしたら「9.11」と『ダイ・ハード』になってしまいます。 現在から思い起こすと、どちらが先に見た映像だったのか、分からなくなっています。 ...

再度引用します。

まず、本書では一本のフィルムを紹介するにあたって、基本的に物語の結末もきちんと書き記しておく主義を採用している。映画はネタバレになれば、もう見る愉しみがなくなってしまうという昨今の愚かしい思い込みとは別の地点に立って、読者に映画の本当の面白さを体験してもらいたいからである。優れたフィルムは、一度見ただけでは絶対に理解できない。幾たびも繰り返し見直し、筋立てなどがどうでもよくなったところにまで到達して、初めて監督の意図したメッセージを受け取ることができるのである。ネタバレを云々する映画の見方は、最も幼稚な見方であることを確認しておきたい。

四方田さんの意見に同意しますが、この映画に関してはやはり情報が少ないほうが楽しめます。

 

(以下、軽いネタバレです)

さて、私はこの映画が「ゾンビ映画を撮る話」ということは知ったうえで見に行きました。

あと、上映時間が約1時間半ということ。

上映時間についても知らない方が望ましいけど、それは難しいですよね。

もちろん「ネタバレ禁止」ということも知っていました。

つまり「ネタ」がかなり重要な要素だということも分かっている、ということです。

したがって、映画をいろいろと疑いながら見ていくことになります。

 

(以下、もう少しネタバレします)

まず 『One Cut of the Dead』というゾンビ映画が流れます。

途中まで見ていると、このゾンビ映画がワンカットで撮ろうとするアイデアを完遂しようとしていることに気づきます。

なるほどね、すばらしいよ。

と、私は若干斜に構えながら見ています。

秘密はこの「ワンカット」にあるわけだな。

『One Cut of the Dead』はぐだぐだながら、なんとなく強引に終わるのですが、どこか違和感があるのです。

いくら何でも、映画としてはうまくいっていないのではないか。

いっぽうで疾走感みたいなものがある。

 

『One Cut of the Dead』が終わり、「一ヶ月前」(だったかな?)というスーパーインポーズが入ります。

いやな予感しかしません。

先のフィルムと打って変わって安っぽい再現ドラマ風。

ワンカットではなく、普通にカメラ割りもされていく普通のフィルム。

評判ほどの映画ではないのではないか?という疑念がよぎります。

しかしそれは第二部が進むにしたがって裏切られていきます(もちろんよい意味で)。

この第二部のための壮大な前振りが『One Cut of the Dead』だったのです。

 

たぶんどの上映回もそうなのだと思いますが、徐々に観客がどっかーんどっかーんと受けまくっています。

びっくり。

私も映画館でここまで笑ったのは初めてでした。

 

フランソワ・トリュフォーの『アメリカの夜』が好きです。

映画監督が映画制作中に次から次に起こるハプニングに対応し続けるという映画。

第二部は『アメリカの夜』に少し似ています。

だけど、『カメラを止めるな』みたいなメタ映画の方法には驚きました。

「NG集」が似ている気もするけど、ちょっと違うな。

映画への愛、登場人物に対する愛がどんどん高まっていき、観客も巻き込まれます。

そういうのが嫌いな人には向かないかもしれません。

だけどそんな人もつい笑い、泣いてしまうかも。

「幾たびも繰り返し見直」すことにも堪えられる映画でもあると思います。

また見てみようかなあ。