『情報生産者になる』

上野千鶴子 ちくま新書

 

情報には、生産・流通(伝達)・消費の過程がありますが、上野さんは情報の「生産者」がいちばん偉いのだと言います。

なぜなら、生産者はいつでも消費者にまわることができるけれど、消費者はどれだけ「通」でも生産者にまわることができないからだそうです。

「情報生産者」になるためのノウハウを余すことなく注ぎ込んだのが、この本です。

もちろん私は情報生産者という言葉だけにあこがれて読みはじめました。

しかし情報生産者への道は、甘いものではありません。

この本でいうところの「情報生産者」とはアカデミックな論文を書ける者のことだからです。

つまりこの本は「論文の書き方」が完璧に書かれている本なのです。

私のように論文を書く訓練をまともに受けてきていない者には、興味深いことばかりです。

緊迫した論文制作の現場のドキュメンタリーを読んでいるようで、おもしろい。

誰も立てたことのない問いを立てなければいけない、のですね。

今までの癖で、正しい答えがきちんと用意されている問いしか思いつけない。

上野先生は厳しいです。

 

さて、論文を書く機会のない者にこの本は役に立たないか。

決してそんなことはありません。

問題の立てかた、調査のしかた、分析のしかた。

初学者相手だからといって手を緩めることなく書かれた本書からは、そのエッセンスを味わうだけでも自分の知的生活(そんなものがあるとしたらですが)に役に立ちそうです。

 

上野ゼミの文献購読では、要約を求めませんでしたし、許しませんでした。

このブログのように、本のレビュー的なものを書いているとあらすじと感想のあいだのどの当たりを書けばいいのか考えてしまいます。

本の紹介に加えて「プラスアルファ」を書いていきたいとは思うのですが、単なる「感想」になってしまいます。

そんな私のような人たち向けに、本書では文献報告を単なる感想文に終わらせないフォーマットが用意されています。

すばらしい。

 

「KJ法」についてもじっくり解説されています。

KJ法からは論文だけでなく、書籍まで生み出せるのです。

川喜多二郎の本も読みたくなりました。

大学生はもちろん、大学に行く前の人にも読んでほしい。

もちろん大学とはあまり関係なくても、知的刺激を受ける本です。