1987年の有馬記念

まだパソコンなんてものは、自宅になかった。

だから馬券を買いに後楽園の場外馬券売場に出かけた。

当時は学生は馬券の購入を禁じられていた。

時効ということで、よろしくお願いしたい。

グランプリレース有馬記念ということもあり、年末の場外馬券売場はごった返していた。

私は「日刊ゲンダイ」で馬券を検討しながら、いま思えばささやかな金額の馬券を買っていた。

私が軸にしていたのは「サクラスターオー」。

4月に行われた皐月賞を制したあと、長い休養明けで迎えた11月の菊花賞を9番人気で勝った。

「菊の季節に桜が満開」という杉本清さんの実況が有名。

私は菊花賞での単勝を的中させて、サクラスターオーにはお世話になっていたのである。

有馬記念では堂々の一番人気。

二番人気は前走ジャパンカップで3着と好走した牝馬ダイナアクトレス。

三番人気にはその年のダービー馬メリーナイス。

私はサクラスターオーから、その年の牝馬三冠を最後に取り損なった名牝マックスビューティを本戦に馬券を購入した。

いつものとおり、的中する予感しかなかった。

天井からぶら下がった場内テレビでレースを見た。

スタート。

どよめき。

なんのどよめきか分からなかった。

三番人気のメリーナイスの騎手が、スタート直後落馬したのだ。

騎手は根本康広。

現調教師で、藤田菜七子の師匠である。

メリーナイスは騎手なしで走っている。

なおこの模様は『優駿』という映画で使われているらしい(見たことないので)。

すでにレースは波乱模様。

メリーナイスへの馬券は買っていたものの、軸はサクラスターオー。

私は気持ちを切り替えてテレビを注視した。

2500メートルのレース。

およそ2分半の戦い。

最後の4コーナー。

私のサクラスターオーがうなりを上げて進出していく。

はずだった。

しかし4コーナーで急ブレーキがかかったサクラスターオーは足をぶらぶらとさせながら止まる。

故障。

何が何だかわからない。

勝ったのは10番人気メジロデュレン。

2着に7番人気ユーワジェイムスが入り、馬券としては大波乱となった。

二頭の頭の文字で「夢」馬券が来た、といわれたものだ。

私は競馬の無常さを思い知った。

それ以降も馬券的な大波乱やスターホースが故障する、といったシーンを見てきた。

しかし、このレースほどに競馬は何が起こるか分からないと思ったことはない。

これを経験したいから、いまだに馬券を買い続けているのかもしれない。

この記事を書いた人

m-betsuo(べつお)

やる気のない中年男性が、やる気を出そうとしています

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