ねじ巻き鳥さんと会わなくなってからも、私はねじ巻き鳥さんの顔のあざのことをよく考えていました。突然ねじ巻き鳥さんの右の頬に現われた青いあざのこと。ねじ巻き鳥さんはある日穴ぐまみたいにこそこそと宮脇さんの空き家の井戸の中に入って、しばらくして出てきたらあのあざがついていたのよね。いま思いだしてみるとなんだかウソみたいなのだけれど、でもそれはほんとうに私の目の前で起こったことなのね。そして私は最初に見たときからずっとそのあざのことをなにかとくべつなしるしなんじゃないかと思っていました。そこにはたぶん何か、私にはわからない深い意味があるんだろうって。だってそうでなければ、急に顔にあざができたりしないものね。
村上春樹『ねじ巻き鳥クロニクル 第3部鳥刺し男編』
先週気づいたのですが、自分の右の頬に赤いあざのようなものが広がっていました。
歳も歳なので、しみかなと思いましたが色がもっと鮮やか。
転んだのか、いや最近は転んでいない。
殴られたのか、いや、殴られてもいない。
色も変わらず、範囲も変わらず今に至っています。