一ヶ月に一度は散髪に行くようにしています。
だけど三週間でうっとうしくなります。
最後の一週間は悶々として過ごすのです。
「いつものように短めにしますね」と美容院のご主人はいいます。
「よろしくお願いします」と私は答えます。
最近ご主人がはまっているのは筋トレです。
店内に、ベンチやダンベルなどが置かれています。
今度は懸垂器を買おうと思っている、とご主人はいいます。
営業時間中はハンガー掛けにしておけばいいから、と。
懸垂器かあ。
自分が買ったら絶対使わなくなる。
いつものように、囚人のような短髪になりました。
髪のくせが強いので、どんどん短くしていったのです。
髪を切ると、左側頭部に隠れていた白髪が出てきます。
全体が白髪になれば銀さんみたいでかっこいいかもしれませんが、現在の白髪の微妙さは矢野財務省官房長のようです。
しかたないので、自宅で白髪を染めます。
「ルシード ワンプッシュケアカラーダークブラウン」がAmazonの定期便で届きます。
白髪を染める、で思い出すのは映画『ヴェニスに死す』です。
確か、主人公の作曲家が少年に恋をし、若作りをするため髪を染めるのです。
しかし主人公は病に侵されます。
瀕死の彼は、ビーチで少年を見るのですが、白髪染めが汗とともに溶け出しています。
残酷描写。
私も同じように若作りをしているのですが、白髪染めの進歩によって溶け出さないだけです。
一方、私はなぜ男性はかつらをつけるのか、と不思議に思います。
かつらにするくらいなら、坊主(あるいはスキンヘッド)にすればいいのに、と考えます。
しかし白髪染めを肯定して、かつらを否定するのは明らかにダブルスタンダードではないか。
どちらも何かを隠していることには変わりはないのですから。
オチを考えていたら時間切れとなってしまいました。
しかたなく飲みに行ったら、美容院のご主人と偶然会うという羽目に陥りました。
カンパーイ。
しかし、びっくりした。
落としどころもありません。
とりあえず、何事も髪を切ってから考えましょう。
ちょきちょき。