日中、気温が30度に近づきそうな中、自転車でいつもと違う道を走っていたら、歩道の真ん中が未舗装で、その部分だけ雑草が生い茂っている変な場所を通った。
舗装しないまでも、刈ればいいのに。
舗装されている部分はとても狭くて、子どもの背丈ほどに伸びた雑草をかすりながら通過すると、草の匂いが鼻をついた。
パーキンソン病で嗅覚がほとんどないはずなのに、草の匂いはなぜかすぐ分かった。
それを「草いきれ」という言葉で表現できることを今の私は知っているけれど、そんな言葉を知らなかった頃に飛ばされた。
野球、といっても4人対4人くらいでやっている。
グラウンドではなく、「空き地」としか表現ができない場所だ。
内野手兼外野手だが、単に守備力も肩も弱いから適当なところを守らされている小学生の私は、長打力を持つクボタくんの打球が頭上をおそったのに対応できず、ボールを追いかけていた。
外野深く、つまり空き地の奥の方は、長く伸びた雑草ばかりだった。
もわっとする「草いきれ」に目がくらむようだった。
今でもそうだが、探し物を見つける能力がはなはだしく低い。
よりによってボールはグリーンのゴムまりだったので草と見分けることができない。
誰かが探すのを手伝ってくれるものだろうか。
私はボールを見つけるまで、この草の匂いの中で這いつくばって生きていくのか。