先日「東京ポッド許可局」を聴いていたら「カメラを止めるな!」の話から、日本人はどうして「フリと回収」が好きなのだろう、という話になっていました。
(2018.9.17「負の感情論」)
鮮やかに伏線が張られていて、それがものの見事に回収される作品を読んだり見たりすると、何はともあれスカッとしてしまう。
物語の推進力の大きな要素のひとつは「謎」だから、それを提示して解いていくというスタイルは普遍的なものです。
といいながら、伏線をスカッと回収している小説を思い出そうとしているのだが、まったく思い出すことができません。
しかたがないので検索してみると、きちんとベスト97化しているサイトがあるのです。
https://my-bookcase.net/entry/伏線がすごい小説おすすめ/
感心するしかない。
偏った読書のため、このリストの中で読んでいるのが村上春樹、トマス・ピンチョン、アガサ・クリスティー、『点と線』『モナドの領域』くらい。
情けない。
これをきっかけに、他の作品もぜひ読んでみたいと思います。
ミステリーが多い気もしますが、伏線を回収しないミステリーは確かに困りますよね。
そして、当然のように伏線回収映画ベスト79もありました。
https://my-bookcase.net/entry/伏線がすごい映画/
すごいなあ。
こちらは小説よりは観ているものが多かったので、なんとなくほっとしました。
映画は芸術的作品でない限り、伏線を回収することこそが肝に違いありません。
『君の名は。』もそう言われればそうですね。
『シックスセンス』もオチがあるといえば伏線系に入るのでしょうか。
『キサラギ』は以前取り上げたことがありました。
しかし私の好みとしては、伏線を張りっぱなしでいったいあれはなんだったんだ、というのも大好きなのです。
水島新司さんの高校野球マンガ『ドカベン』。
主人公の「ドカベン」こと山田太郎を擁する明訓高校を倒すために、ライバル校が登場します。
明訓を倒した弁慶高校の武蔵坊数馬、義経光。
土佐丸高校の犬飼兄弟。
白新高校の不知火守などなど。
個性豊かなライバルたち。
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そのいっぽうで、水島さんが飽きっぽいのか忘れっぽいのか、なんだかすごそうなライバルが出てくるのですが、いつの間にか消えていってしまう。
特に『ドカベン』の終盤、山田2年秋の関東大会はひどい。
大熊谷高校、下尾高校、日光学園、中山畜産高校など関東の強豪が打倒明訓に名乗りを上げた、とぶち上げます。
しかし、彼らは数ページであっさり敗退していきます。
私の想像ですが、当時の水島さんは『ドカベン』の続編である『大甲子園』の構想に夢中になってしまったのだと思います。
『大甲子園』は『ドカベン』の世界に、水島新司の他の高校野球マンガ『球道くん』『一球さん』などがなだれ込む、水島高校野球マンガの集大成となるマンガになるのです。
水島さんは、とっとと『ドカベン』を終えて『大甲子園』を描きたいと思っていたはずです。
で、いったん立ちあげたライバルたちのことを放り出してしまったのではないかと。
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だけど、人生ってそんなもんですよね。
そんなに思うどおりに決着がつけられるはずがない。
こうしよう、と計画したことが立ち消えになることばかりじゃないですか。
物語的なことなんて、そう起きるもんじゃない。
伏線は伏線のまま、消えていくのです……
などという、人生論によって伏線不回収系が好きなわけでありません。
自分自身がオチのある話をすることがまったくできないというのが、たぶんほんとの理由です。
やっぱり、オチない。